電磁界解析ソフトウェアEMSolution

直線運動導体(山崎モデル)

概要

本モデルは、千葉工業大学山崎氏が提案された運動導体渦電流テスト問題です。

解説

本モデルは、千葉工業大学山崎氏が提案された運動導体渦電流テスト問題で、Fig.1 に示されます [ 参考文献 ] 。鉄ヨーク ( 比透磁率1000) にコイルが巻かれた磁場源中を導体(電気伝導率107S/m) が10m/secで運動します。モデルは、z=0面およびy=0面に対して対称であり、1/4領域を有限要素モデル領域としています。境界条件は、Fig.2 に示すように、z=0, z=55Bn=0, y=0, y=60Ht=0 とします。また、x方向には、周期反対称条件とします。

Fig.1 解析モデル

Fig.2 解析領域と境界条件

Fig.3に直流場渦電流解析による渦電流分布を示します。また、Fig.4にスライド法による過渡解析との比較を示します。過渡解析では、2周期目と5周期目でほとんど変化がありません。過渡解析は、直流場渦電流解析に対応させるために後退差分法( q =1)で行いましたが、q=2/3としても変わりません。また、直流場渦電流解析の結果を初期値として、過渡解析を行っても、変動は起こりません。結果は、直流場渦電流解析では、約半メッシュ分布が運動方向にずれたものになりました。これは、ポスト処理として渦電流を求めるのに、過渡解析では時間中心差分、直流場渦電流解析では後退差分を用いているためと思われます。中心差分の方が精度があるものと考えています。

Fig.3 直流場渦電流解析による
渦電流分布図($A/m^2$)

Fig.4 渦電流分布
(y=1.25mm, z=8.75mm)

Fig.5に直流場渦電流解析の結果を風上 (運動の逆)方向に半メッシュずらせて表示します。この場合、過渡解析と直流場渦電流解析の結果は良く一致します。また、運動方向にメッシュを倍にして解析した結果も重ねて示しています。電流ピーク近傍で不一致が見られますが、他のところではよく一致します。この不一致は、メッシュを細かくしたことによる精度の向上によると考えられます。 では、渦電流分布は後退差分のまま出力します。直流場渦電流解析では導体は運動方向に一様だと仮定しますので、半メッシュずれて分布がでていることをご理解の上使用していただければ問題は無いと思います。

Fig.5 渦電流分布
(y=1.25mm, z=8.75mm)
直流場渦電流解析に対しては
横軸を半メッシュ風上側に移動

次に、Fig.6に磁場分布を示します。過渡解析5周期目でほとんど一致しています。Fig.7に導体に働く運動方向電磁力(ブレーキ力となります)の過渡解析における時間変化と直流場渦電流解析によるものを示しています。過渡解析定常値と直流場渦電流解析の結果は両者 0.166033mNと完全に一致しています。また、過渡解析では定常になったとき、その電磁力はジュール損 /速度で表されますが、この値も 0.166011mNとなっており、非常によい一致を示しています。

Fig.6 磁場分布
(y=1.25mm, z=8.75mm)

Fig.7 導体に働くトータル力

以上のように、過渡解析と直流場渦電流はほとんど同じ結果となっており、本直流場渦電流解析の妥当性が示されました。本例では2周期程度で収束しますので、過渡解析で計算を行うことができますが、それでも60ステップ以上の解析が必要とされ、1ステップで定常状態が求められる直流場渦電流解析の意義は大きいと思われます。
2章で電気スカラポテンシャルの取り扱いについて示しましたが、結果はほとんど同じものになっています。計算時間は、 (1)A法で 192sec 、(2)A-法で78sec、(3) A-法で 51secとなっています。

Fig.8に直流場渦電流解析を初期値にして同速度で過渡解析をした場合の磁束密度強度変化を示します。導体は運動していますが、止まっている座標系で同じ位置における磁場は変化していません。このことからも、直流場渦電流解析結果の妥当性が解ります。

Fig.8 直流場渦電流解析結果を
初期値にして同速度で
過渡解析をした場合の磁束密度強度変化

参考文献

K. Yamazaki, “Generalization of 3D Eddy Current Analysis for Moving Conductors Due to Coordinate Systems and Gauge Conditions”, IEEE Transaction on Magnetics , Vol. 33, No. 2, March 1997.

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