バルク導体を電源につなぎ渦電流を考慮した通電電流分布を求めたい場合,電流磁場ソースとしてSUFCURが使用できます。バルク導体に電圧を印加する場合,端子間に電位差を与えるのが一般的で,電気スカラーポテンシャルを使用して与えます。EMSolutionでは電気スカラーポテンシャルとしてその時間積分を使用していますので,SUFCURでも同じポテンシャルを使用して電位差を与えています。CIRCUITやNETWORKでSUFCURを使用するとFLUXが出力されますが,この値は他の電流磁場ソース(SDEFCOILやPHICOILなど)で出力しているコイル鎖交磁束とは異なり,端子に与えている電気スカラーポテンシャルの時間積分量を出力しています。次元は鎖交磁束と同じですが,入力面が接合している導体領域の鎖交磁束とは異なるものです。そこで,新たにSUFCUR2として,PHICOILと同様に入力面と導体領域を定義することで,導体領域の鎖交磁束をFLUXに出力するようにしました。本機能を簡単に紹介します。
Fig.1に示す,鉄心・コイルモデル(1/8領域モデル)を用いて説明します。表皮効果の影響が出ない1Hzとし,PHICOIL,SUFCUR,開発したSUFCUR2を用いて電流源交流定常解析(AC)を行います。Fig.2に電圧波形と鎖交磁束波形を示します。電圧波形はすべての結果で一致していることから,回路での電流と電圧の関係は正しく計算され,磁束密度分布等も一致します。一方,鎖交磁束はPHICOILとSUFCUR2では一致しますがSUFCURでは全く異なる波形となっています。このように従来のSUFCURでは正しくコイル鎖交磁束が計算されないことがわかります。周波数が高くなると,SUFCURでは渦電流の影響でPHICOILとの差が出てくることになります。
次に,Fig.3に示す平角コイルを用いたIPMモータで同様の解析を行ってみます。SUFCURは静磁界解析(Static)では使用できないため,計算初期の数値的な過渡状態を除くために最初にPHICOILで初期値を求めてリスタート解析を行います。ここでは簡単のため正弦波電流源解析を実行し,計算結果として得られる電圧波形とコイル鎖交磁束を比較します。
Fig.4に二次元解析で得られた電圧波形とコイル鎖交磁束を示します。計算初期から定常に達していることが確認できます。本計算でも電圧波形およびコイル鎖交磁束はPHICOLとSUFCUR2で一致することが確認できます。
次に,三次元解析を実行します。Fig.6に三次元モデルを示します。コイルはPHICOILとSUFCUR2で設定します。二次元モデルではコイル領域全てをPHICOILもしくはSUFCUR2と設定し,回路で接続していましたが,Fig.6(c)に示すように三次元モデルでは(反)周期境界面で接続されるコイルプロパティがあるため,軸方向対称面のどちらかを設定することになります。
Fig.7に100Arms, 60deg, 2000min-1時のコイル鎖交磁束を示します。渦電流の影響は小さく,PHICOILとSUFCUR2でよく一致することが確認できます。
以上簡単ですが,コイルをバルク導体としてモデル化する場合に有用なSUFCUR2について紹介しました。従来のSUFCURでも電流と電圧の関係は正しく計算されますが,プロパティごとに定義する必要があるため,NETWORKやCIRCUITでの回路接続を設定するのが多少大変ですが,SUFCUR2を使用すればPHICOILと同様の設定方法であるため,簡便になると思われます。またバルク導体の鎖交磁束を評価したい場合はSUFCUR2を使用することをお勧めします。
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