角形スパイラル状インダクタの解析を例に取り、EMSolutionで使用できる非磁性薄板シェル要素、表面インピーダンス要素、ギャップ要素などのシェル要素の適用例を示します。
Fig.1に本解析のモデルを示します。
角形スパイラルは厚さが無視できるとし、非磁性薄板シェル要素でモデル化します。すなわち、表皮効果が無く断面内で一様に電流が流れるとします。シェル特性としては導電率(10$^7$S/m) と厚さ(0.1μm)を与えます。スパイラルの外形は10mm角とし、線幅0.5mm、線間0.5mmとして、約5ターンしているものとしています。スパ イラルにはソリッド要素で表される給電線で給電します。給電線の中間にデルタギャップ給電で電源からの電圧を与えます。デルタギャップ給電では、ギャップの上下に電圧を与えます。給電面を与えるため、ギャップ要素を定義します。ギャップ要素は、導体から一層はみ出した形で図のように与えます。底面は、充分厚い非磁性導体とし、表面インピーダンス要素で定義し、導電率(10$^7$S/m)を与えます。スパイラルと底面の距離は2mmとしています。
デルタギャップに振幅1V、周波数1MHzの電圧を与えた場合のスパイラル内の電流分布をFig.2に示します。位相0でのもので、ほぼ一定密度(約10$^8$A/m$^2$)の電流が流れています。Fig.3に表面インピーダンスで表される底面の渦電流分布を示します。表面インピーダンス法においては、厚さ方向の電流密度は積 分され、面内密度(A/m)で表されます。スパイラルの電流と逆方向に渦を巻き、給電線間を渡っています。Fig.4にスパイラル中心面の磁束密度分布を示します。スパイラル面を貫きループしているのが解ります。
計算された電流量から、全体のインピーダンスは複素数で205+0.59j(Ω)と計算されます。これをR+jωLと等値しますと、抵抗R=205Ω、インダクタンスL=9.5×10$^{-8}$Hと計算されます。スパイラルの全長は103mm程度になりますが、それから抵抗を計算しますと207Ωとなり、ほぼ一致しています。インダクタンスは、底面との距離に依存します。また、実際にはスパイラル線幅方向に電流が分布することが考えられ、より精度を出すには線幅方向の分割が必要になると思われます。
inputファイル内の要素特性定義は以下のようになります。面要素物性番号1、4、5はそれぞれ、非磁性薄板要素、ギャップ要素、表面インピーダンス要素を表します。
また、デルタギャップ給電は、面流入電流ソース(SUFCUR)で以下のように定義されます。ギャップ面とSUFCURの面は同じ物性番号4を用いています。
・ input
・ pre_geom.neu
*節点数が27600のため、試用版では実行できません。
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