電磁界解析ソフトウェアEMSolution

スライド法における形状データ精度の影響

概要

スライド法を使用する場合、メッシュデータの精度が大きく影響する場合があります。特に、スライド面に面する周期両側の節点位置が周期と完全に一致しない場合に問題が起こります。ICCG法が収束せず発散したり、収束しても妥当な解が得られなかったりします。以下、簡単な例を示します。

解説

Fig.1のように、軸対称のコイルがあり、外側は空気 とします。空気領域はスライド面で分けられており、内部が5度(回転方向メッシュの半分)回転した位置にあるとします。正常に計算されますと、Fig.2の様な軸対称の磁場が計算されます。上方から見るとFig.3のようになり、軸対称磁場になっていることがわかります。

Fig.1 解析モデル

Fig.2 磁束密度分布

Fig.3 磁束密度分布、上方より投影

ここで、強制的に、Fig.4に示すように、片側の節点位置を0.1度移動させたメッシュで解析しますと、磁場は、Fig.4の様になってしまいます。この場合は、磁場が小さなところで起こっていまして、大きな問題にはなりませんが、不自然な結果となっています。ICCG法の収束はFig.5のようになっています。節点を移動した場合も収束はしていますが、収束が滑らかでなく、反復回数も多くなっています。

Fig.4 問題の磁束密度分布

Fig.5 ICCG法の収束

以上のように、周期対称位置が精度良く対称位置にない場合、収束が悪くなり、結果も妥当なものではなくなります。原因は、固定部と可動部で、磁束量の釣り合いがとれないことによるものです。この問題は、この例のようなメッシュで、移動方向にメッシュが等間隔で、解析もそのメッシュが重なったときに行うのであれば、スライド面のFITNESSパラメータに0.1程度の値を入力することにより避けられます。しかし、メッシュ位置がそれぞれの中間位置にくるような場合には適用できません。

より大規模なメッシュでは、より条件が厳しくなるようです。メッシュを作成する場合、幾分かの位置誤差が生じるものですが、その程度の誤差でも問題が起こる場合が有ります。この場合、有効桁も重要で、精度を上げるほど収束が良くなります。できるだけ、大きな有効桁まで対称位置の節点座標が一致することが必要です。FEMAP nerutral File形式で、出力を8桁から12桁に変え、かつEMSolution入力も有効桁を増やすことにより、$10^{-4}$までしか収束しなかったものが、$10^6$まで収束し、妥当な解を得られたという例があります。この場合、ICCG法を長く続け発散収束を繰り返した後に収束したかと思われたのですが、得られた結果はスライド面近傍で磁場分布が不自然なものでした。EMSolutionで入力の有効桁を増やすには、入力パラメータWIDEを1、または2としてください。

スライド面でメッシュが重なるときには良く収束し、中間の位置に来るとき収束しなくなる場合は、このような原因が考えられます。可動部の運動解析を行うような場合は本例のような状況になりますので、メッシュデータに充分な精度が必要とされます。
なお、前述のように節点座標の精度を確保することは、メッシュ作成において大きな負荷となりますので、EMSolution r9.7.8より、プログラム内部で対称位置の節点を強制的に等しいものに置き換え、周期座標の小さい方に合わせます。このため、周期座標の大きい方では、わずかに座標値が変わります。post_geomに反映されますのでご確認下さい。

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