電磁界解析ソフトウェアEMSolution

非磁性薄板要素に働くローレンツ力

概要

EMSolutionにおきましては、非磁性薄板要素を用意しています。板厚が表皮厚さに比べて充分小さい非磁性導体板に適用でき、面要素で定義します。三次元ソリッド要素でモデル化した場合、非常に扁平な要素を使用せざるをえず、ICCG法の収束が遅くなりますが、非磁性薄板要素を用いるとそのようなことはなく、また、メッシュ作成が容易になります。

解説

従来、非磁性薄板要素に働く電磁力は節点力法による計算しか行いませんでしたが、ローレンツ力(J×B)による計算機能を追加しましたので報告します。非磁性薄板要素では、面垂直方向の磁場は属性として持っているのですが、面内方向の磁場の属性を持っておらず、また、面の上下面で面内方向磁場は不連続となります。このため、計算が難しく開発が遅れていたのですが、上下面に接するソリッド要素から、上下面における面内方向磁場を求め、それらを平均することにより、面要素内の面内成分磁場としました。 以下、簡単な計算例を示し、その妥当性を評価します。解析モデルは、Fig.1様に正方形板の1/2をモデル化し、一方の側(x>0)をソリッド要素、他方(x<0)を面要素でモデル化します。両者は同じ等価厚みを持つとします。円形コイルで磁場を加え、導体板内の渦電流と電磁力を求めます。解析は充分周波数の低い10Hzの交流定常解析を行います。

Fig.1 解析モデル

Fig.2は、解析された位相ゼロにおける渦電流分布を示します。ソリッド要素側と面要素側でほぼ対称な電流分布となっており、非磁性薄板要素による近似が妥当なものとなっています。Fig.3は節点力法によって求めた電磁力密度分布を示します。Fig.4は新たに機能として設けた、ローレンツ力による電磁力密度分布です。節点力法よるものと、ローレンツ力によるのものは、面要素側でも良く一致しています。

Fig.2 電流密度[$N/m^2$]

Fig.3 節点力法による
電磁力密度分布[$N/m^3$]

Fig.4 ローレンツ力による
電磁力密度分布[$N/m^3$]

次に、各領域の積算力の解析結果を示します。Fig.5、6に節点力法とローレンツ力によるソリッド側と面要素側の、各方向の積算力の時間変化を示します。両者の一致は良く、また、ソリッド側と面要素側の対称性も良く出ています。すなわち、$Fx(Solid)=-Fx(Shell)$、$Fy(Solid)=Fy(Shell)$、$Fz(Solid)=Fz(Shell)$の関係が見て取れます。面要素側のFxは比較しやすいように正負を反転しています。

Fig.5 節点力法による電磁力
トータル時間変化

Fig.6 ローレンツ力による電磁力
トータル時間変化

非磁性薄板要素に働くローレンツ力 一方、コイルに働く電磁力は、"新機能 44.COIL(外部電流磁場ソース)の電磁力計算"により求まりますが、コイルに働く電磁力の変化をFig.7に示します。Fig.5、6と比較しやすいように、正負を反転しています。導体に働く力と、コイルに働く力は作用反作用の関係で、逆方向で値が等しいものになるはずで、計算結果もそうなっています。

Fig.7 COILに働くz方向電磁力
トータル時間変化

以上のように、ローレンツ力による電磁力の解析結果は、節点力法によるものと良く一致し、妥当なものとなっています。本来、非磁性導体においては、ローレンツ力と節点力法による電磁力は一致すべきものですが、数値誤差で一致が良くない場合も少なくありません。面要素による近似でも、両者の比較ができるようになり、電磁力の精度検討に役立てるかと考えます。また、強磁場中で微弱な磁場変動があった場合、節点力では精度が出せない場合があります。本来出るはずが無い静磁場下でも節点力による電磁力が計算されてしまうことがあります。このような場合には、ローレンツ力による計算がより妥当なものと考えられます。 ローレンツ力と節点力の関係については、こちらをご参照ください。

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