“収束条件と解析精度”でも説明していますように,必要な精度を得るためにICCG法やニュートン・ラフソン法の収束条件は大きな課題です。 高い精度を得るためには収束条件を厳しくすることになりますが,その場合計算時間が増大します。また,収束性が緩やかであったり,ニュートン・ラフソン法の最大反復回数NONLINEAR_ITERATIONSで収束計算が打ち切られた場合,十分な精度を得られていないケースもあります。こういった場合,これまでのEMSolutionでは,収束条件を厳しくして最初から再計算しなければならず,特に三次元解析の場合は計算コストが高くなっていました。 そこでこの度,一度計算された結果を初期値とし,収束条件を厳しくしたリスタート解析機能を追加致しました。 “収束条件と解析精度”で使用したTEAM Workshop Problem 20(Fig.1)を例に説明します。
まず,ベンチマークにあるオリジナルのデータで解析してみます。 Fig.2にコイル電流1kA(1ステップ目)のICCG反復回数と残差を示します。
オリジナルの収束条件(original)では収束が悪く,ニュートン・ラフソン法の最終ステップで収束条件(ICCG_CONV=1.0e-6)を満足しないまま,ICCG法が発散してしまいます。 ただし,磁場の変化の最大値($δB_{max}$ )は3.23e-3Tと十分収束しており,original条件でも測定値と比較して精度が出ていることが文献(1)でも実証されていますが,ICCG法が発散することには疑問が残るかと思います。その後の追加機能により,以下のような設定を行うことで収束性が改善することがわかっており,実際にこの条件で再計算してみますと(mod),オリジナルより若干多いステップで$δB_{max}$ =0.01T以下まで(ICCG残差では1.0e-9レベル)収束することがわかります。
計算時間はoriginal,mod共に4ステップで30秒程度と同程度ですが,収束条件のみを変更して2回同じ問題を解析するということは,2倍の計算コストがかかることを意味しています。
そこで,今回追加した新機能である収束条件変更のリスタート解析機能を適用し, originalの結果を初期値とし,modの設定を反映した計算してみますと(restart3),オリジナルの最終ステップの残差から計算がスタートし,すぐにmodと同程度まで収束することがわかります。 計算時間も8秒で済んでいます。 Table 1に計算結果である鎖交磁束を示します。 結果的にはoriginalでもmodと比較するとは有効数字4桁目までは一致しており,十分な精度があると言えます。 収束条件を厳しくしたmodとrestart3は有効数字5桁目まで一致していることから,ほぼ同じ解に到達していると考えられます。
鎖交磁束(Wb) | ||||
---|---|---|---|---|
original | mod | restart3 | ||
1000A | Loop1 | 4.42284E-05 | 4.42287E-05 | 4.42287E-05 |
Loop2 | -4.16667E-05 | -4.16671E-05 | -4.16671E-05 | |
3000A | Loop1 | 1.11718E-04 | 1.11718E-04 | 1.11718E-04 |
Loop2 | -1.12385E-04 | -1.12385E-04 | -1.12385E-04 | |
4500A | Loop1 | 1.25318E-04 | 1.25319E-04 | 1.25319E-04 |
Loop2 | -1.37195E-04 | -1.37195E-04 | -1.37195E-04 | |
5000A | Loop1 | 1.28069E-04 | 1.28069E-04 | 1.28069E-04 |
Loop2 | -1.43926E-04 | -1.43927E-04 | -1.43927E-04 |
本機能は静磁場(STATIC),交流定常(AC),過渡(TRANSIENT)で使用できます。
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