EMSolutionでは"PHICOIL","SUFCUR"および"DCCURR"をコイルやバルク導体として周期境界面をまたいで定義する場合,従来はメッシュ内部のコイルや導体断面にギャップ要素を定義する必要がありました。周期境界面に電流流入面をギャップ要素で定義する場合には対応できなくなっておりました。この度,周期境界面に電流流入面をギャップ要素無しで定義して解析できるようにしましたので報告いたします。また,定常電流場解析でも解析できるようにしています。
本機能は周期境界条件の一種であり,等差周期境界条件(文献[1])とも呼ばれています。周期境界間に電位差を与えるために,従来は360度モデル同様にギャップ要素により電位差を与えていましたが,電流流入面と電流流出面間に電位差を与えて解けるようにしました。 これにより,"周期境界におけるPHICOIL"や"回転周期z反転対称性におけるPHICOIL"のモデルを周期境界面にギャップ要素無しで解析することが可能となりました。
検証計算として,"周期境界におけるPHICOIL"のモデルを用いて周期境界面にPHICOILの電流入力面を定義します。Fig.1に計算結果をメッシュ内部にギャップ要素を用いて定義した結果と併せて示します。当たり前ですが一致していることが確認できます。これより,ギャップ要素はコイル断面より一層外側まで定義しなくてはなりませんが,周期境界面に鏡面対称面と同様に,コイル断面のみに電流入力面を定義できるようになったことで簡便に設定できるようになったと思います。
Fig.2に示す,穴あき導体が周期境界であるモデルで,定常電流場解析を行うことを考えます[1]。X方向は周期境界条件で,電流の連続性が満足されるとします。この場合,周期境界条件は解析モデルの一部を取り出しているため,モデル両端にかかる電圧を入力します。仮に1/10モデルだとすれば,全体にかかる電圧を入力してREGION_FACTOR=10とすることでも解析できます。
Fig.3に周期境界条件とした場合と鏡面対称条件とした場合の電流分布を示します。鏡面対称条件の場合,境界面で電流が垂直に流出入するのに対し,周期境界条件では電流密度が左右で斜めの成分も持つ周期境界となっていることが確認できます。本モデルではわずかな差がみられる程度ですが,問題によっては無視できない差が出うると思われますので本機能をご使用いただければと思います。
簡単ですが,周期境界面でPHICOILによる解析と定常電流場解析でギャップ要素無しで解析できる機能について紹介しました。本機能は先に述べたように,"PHICOIL","SUFCUR","DCCURR"と"定常電流場解析機能"でご使用いただけます。
ご使用方法は,鏡面対称面(Bn=0面)同様,周期境界面に電流入力面を定義すれば計算可能です。
[1]: 徳増,藤田:「2次元解析に残された課題」,電学静止器・回転機合同研資, SA-05-73, RM-05-80 (2005)
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