EMSolutionでは、COILを六面体のメッシュで作成し定義することができます。以下、メッシュにより定義されたCOILをMeshed COILと呼びます。
Fig.1に示すモデルは、四辺形のコイル断面形状を作成し、それをコイル長に沿って押し出すことで六面体要素を作成しています。断面は必ずしも長方形である必要はなく、歪んでいてもかまいません。ただし、六面体要素の下面および上面の4節点は一平面上にあるように作成してください。上下面が一平面上にない場合も計算は可能ですが、厳密には電流連続性が満たされない場合があります。このように定義されたメッシュを「COIL_geom.xxx」ファイルに格納し入力ファイルとします。.xxxの拡張子は「input. 10.入出力ファイル」のINPUT_MESH_FILEによります。 なお、ARCやGCEで表現できる形状であれば、それらを利用した方が解析的に計算されるため高精度な解を得られます。
Fig.2、3に電流積分によって求めた中心平面上の磁場を示します。Meshed COILの定義は、GCEやARC等と同様にCOILの定義の中に記述します。CALC_INDを1にすると、インダクタンスの計算を行い回路計算に含めます。
COILの電磁力計算結果をFig.4に示します。この計算ではCOILの自己力のみを計算していますが、有限要素法を組み合わせることにより導体や磁性体の寄与を含む電磁力計算も可能です。
インダクタンスや電磁力の計算においては、要素断面内のガウス積分点数(NX、NY)と電流方向の積分点数(NZ)を指定することができます。NZ=0としますと電流方向の積分点数を自動的に判断するアダプティブ計算を行います。これらのパラメータを変えてインダクタンスを計算した結果をTable Iに示します。本例の場合は、NX=NY=NZ=3で充分と思われます。六面体要素の数が多くなると、計算時間は増加します(インダクタンスの計算時間は要素数の自乗に比例します)。また、変形ポテンシャル領域での磁場源として用いた場合は境界面での積分が必要となり、その計算時間が多大になることがあります。この問題は、リスタート機能を用いることで避けることができます。この計算やインダクタンスの計算はMAKE_SYSTEM_MATRICESプロセスで行われますので、インダクタンスを最初に計算しておき、NETWORKやCIRCUITの回路定数として入力し、CALC_INDオプションを0として計算することも可能です。(計算時間の短縮が図れます。)
Table I. インダクタンス計算
Nx | Ny | Nz | CPU Times ( s ) | Inductance( μH ) |
3 | 3 | 3 | 95.3 | 7.31916 |
5 | 5 | 5 | 452.7 | 7.31831 |
7 | 7 | 7 | 1218.5 | 7.31815 |
3 | 3 | 0 | 240.7 | 7.31875 |
回転機(永久磁石モータ)のステータ巻線にMeshed COILを利用した例を示します。
Fig.5に、定義されたコイル全体を示します。一つのコイルを作成し、回転コピーして12本のコイルとし、各相ごとに物性番号を与えています。この解析では、上下対称、4回周期対称を用いますので、インダクタンスの計算では積分領域を1/8領域でのみ定義し、別途Fig.6のように積分領域を定義します。このように定義されたMeshed COILは、従来のCOILと同様に変形ポテンシャル領域内に定義される必要があります。その様子をFig.7に示します。 変形ポテンシャル領域はコイルスロットおよびコイルエンド部分をカバーする領域としています。
Meshed COILよって解析されたトルク波形をFig.8に示します。他のモデル化による結果("モータの巻き線へのCOILの適用例" Fig.11)と重ねて表示しています。なお、Fig.5に示すコイルエンド部分は仮想的に作成したものであり、実際は、機器に合わせてモデル化する必要があります。
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