従来、EMSolutionには磁性体中の物理量として磁束密度B (T)と磁化M (T)を出力する機能がありましたが、磁界強度H (A/m)を出力する機能はありませんでした。出力された磁束密度とBH カーブ、磁化との関係から磁界強度を計算することは可能ですが、二次元磁気異方性の場合は磁界強度H の計算は二次元内挿が必要で容易ではありません。この度、磁性体中の磁界強度を出力することが可能となりましたので報告します。加えて、二次元磁気異方性での解析ではこれまで磁化M は出力できませんでしたが、出力できるようになりました。ただし、空気や非磁性体中の磁界強度は磁化M が無く、真空の透磁率を用いて簡単に逆算できるため、本機能は磁性体のみを対象とします。
なお,磁性体中の磁束密度B と磁界強度H ,磁化Mの関係式は,次式で表されます。
$$B = \mu_0 H + M (1)$$
例題として,"電磁力解析の問題点"でも使用している,TEAM Workshop Problem23のコイルと磁石を解析対象とした解析を行ってみます。 コイル電流は0Aとした磁石のみの解析で,"電磁力解析の問題点"のFig.5に対応します。 磁石中では磁束密度Bと磁界強度Hは逆向きになることを確認します。 Fig.1に磁化,磁束密度,磁界強度の分布を示します。 -Z方向に1.22Tの磁石の磁化入力を与えており,磁束密度は同方向,磁界強度は逆方向となっていることが確認できます。
次に,"非線形二次元異方性磁気特性の解析"に示すリングモデルを使用して磁界強度を出力してみます。磁性体は一軸異方性の大きな35G165を使用し,磁化容易方向はX方向(0度),困難方向はY方向(90度)とします。参考までに,磁化容易方向(0度)のBHカーブを等方性として与えた解析,X方向に磁化容易方向(0度)の,Y方向に困難方向(90度)のBHカーブを与え,Z方向は比透磁率を与えたXYZ方向独立の解析も示します。コイルに印加する電流は48ATの静磁場解析です。等方性では磁束密度と磁界強度は同じ方向となりますが,XYZ方向独立,二次元磁気異方性では磁束密度と磁界強度は角度差を持っているため,磁束密度と磁界強度の分布が異なっており,興味深い結果が得られています。また,二次元磁気異方性解析では,磁化の出力ができるようになりましたので参考までに一緒に示します。
なお,これらの解析で示す磁束密度と磁界強度の角度差は材質の磁気異方性によるものであり,磁気特性は初磁化曲線を使用していますので,ヒステリシスを考慮したものではございません。ヒステリシスを考慮した解析にご興味がありましたら,"こちら"から問い合わせください。
以上、磁石内や磁性体内の磁界強度が出力できることを示しました。また,二次元磁気異方性解析の場合でも,磁化出力できるようになりましたのでご使用下さい。これらはポスト処理により簡単に出力できますので,ご使用いただければと思います。
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