電磁界解析ソフトウェアEMSolution

磁化および電流による二次元空間磁場

概要

EMSolutionでは,ビオ・サバール則に基づく磁化および電流の空間磁場積分機能があり,要素や節点からの内挿による磁束密度よりも精度が高いと評価をいただいております。しかしながら,二次元並進解析(XY面で定義し,Z方向は無限長)には対応しておりませんでした。このたび,二次元並進解析にも適用しましたので,例題を用いて説明します。
また,二次元軸対称解析での使用方法についても説明します。

解説

二次元並進解析

磁化および電流からの二次元磁場積分は下の式で行います。  

$$\mathbf{B}(\mathbf{r}_{p}) = \frac{\mu_{0}}{2\pi} \int_\Omega \frac{ \mathbf{J}(\mathbf{R}) \times \mathbf{r}}{r^2} dv \:-\: \frac{1}{2\pi} \int_\Omega \left( \frac {\mathbf{M}}{r^2} \:-\: \frac {2(\mathbf{M}) \cdot \mathbf{r}) \mathbf{r}} {r^4} \right) dv$$  

ここで,  

$$\mathbf{r} = \mathbf{r}_{p} – \mathbf{R} , r = |r| $$  

です。
三次元と同様に,$r_p$は求めたい空間点の座標,$R$は積分点座標です。二次元解析では$J_z$成分のみですので,電流の磁場積分項は簡略化できます。簡単なモデル(Fig.1)で例を示します。線形磁性体(比透磁率1000)とコイルがあるモデルで磁性体上部に空間点を設けます。静磁場解析を行い,Fig.2に空間点座標における節点量として出力された磁束密度と,磁化および電流の磁場積分から求められた磁束密度を成分ごとに示します。これより,多少の差はあるもののよく一致していることがわかります。特にBy成分に差が大きく見られますが,これはコイルと磁性体のメッシュがやや粗いことと,“磁化および電流の空間磁場積分”でも述べましたように,本問題は開領域問題であるため,FEMメッシュの遠方境界によるものです。遠方境界メッシュを伸長していくと,磁化および電流の磁場積分の結果は変わりませんが,FEMで得られた結果は磁化および電流の磁場積分結果に漸近していきます。

Fig.1 二次元並進モデル
(赤丸が積分点)

Fig.2 y=0.6m線上の磁束密度

二次元軸対称解析

Fig.1のモデルをZX面で定義しなおし,二次元軸対称解析を行います。円筒座標系の磁化および電流の磁場積分は完全楕円積分を用いるため式が複雑となります[文献1]。そこで,回転周期対称性と磁化磁場積分にある,回転周期対称性を用いて計算してみます。
EMSolutionでは二次元軸対称解析では角度方向に一層分メッシュを作成し,三次元メッシュとして解析します。ここで,一度分角度方向に拡張しますと,回転周期対称性は360となります。これを設定して磁化および電流の磁場積分を計算します。
Fig.3にFig.2と同様に空間点座標における節点量として出力された磁束密度と,磁化および電流の磁場積分から求められた磁束密度を成分ごとに示します。この場合も多少の差はあるもののよく一致していることがわかります。

Fig.3 z=0.6m線上の磁束密度

参考文献

「電磁界解析における高速大規模数値計算技術」,電気学会技術報告,1043号(2006)

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