EMSolutionでは、ギャップ要素により、磁性体間にある幅の狭いギャップを近似できます。ギャップ要素を使用すると扁平な三次元要素を避けることができ、解析時間の短縮を図れます。また、厚さゼロのギャップ要素を挟むことにより、吸着している時の磁性体間の吸引力が計算できます。ただし、ギャップ面内方向の電磁力は正しく求まりません。
ここでは、例題を通じて、この問題点について報告します。
Fig.1の様な二次元解析を考えます。上下2つのヨークが1mmの空気ギャップを挟んで図のように対向しているとします。コイル電流の励磁により磁束を通すとヨーク間には吸引力が働きます。また、上部は右方向に、下部は左方向に力を受けると考えられます。解析は境界条件として、上下は$H_t$=0面とし、左右は反対照周期条件としました。Fig.1には解析された磁束密度分布を重ねて示しています。
Fig.2にギャップ要素を用いないで計算した場合の、節点力の分布を示します。予想通り、ヨーク間の吸引力と上部ヨークを右側に、下ヨークを左側に引く力が現れています。トータルの力は、上ヨークに対して、x方向に29.0N、y方向に-1413N(それぞれ厚さ方向1cm当たり)となっています。メッシュが荒いように見えますが、メッシュを細かくして確認したところ1%程度の精度があります。
これに対し、ギャップ要素を用いますとFig.3の様になります。トータルはx方向10.1N、y方向-1412Nとなっています。ギャップ要素に垂直方向のy方向の節点力は分布およびトータルで非常に良い一致を示しています。ところが、面内方向のx成分は、分布もトータルもあっていません。
この様な結果になる原因は、EMSolutionにおけるギャップ要素の取り扱いにおいては、要素の厚さを無視し磁気抵抗のみを持たせているためです。基本的には、磁場は要素に対して垂直方向とし面内方向磁場を無視しています。節点力を求める際には要素両面に接する要素の面内方向磁場のHが連続として面内方向磁場も含めていますが、その精度がありません。
これを解決するためには、面内方向磁場に対する自由度を加える必要があります。箔要素と言われているものがこれに相当し、将来的には EMSolutionにも取り入れたいと考えています。現状ではこのような問題点があることをご承知の上でギャップ要素をご利用ください。すなわち、ギャップ要素使用時の電磁力は、両側の磁性体間の吸引力は精度良く算出できますが、面内方向電磁力はかけ離れた結果となります。例えばモータのトルク計算のような場合にギャップ要素をステータとロータに入れてギャップを近似した場合は、そのトルク値の精度は悪く、ギャップ要素を使うことができません。
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