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Frozen permeability法による磁束密度の要因分析

概要

Frozen permeability法とは,PMモータのようにロータとステータにそれぞれ起磁力源がある場合に,両方を励磁させた状態で一度非線形磁化特性を考慮した解析を行い,そこで得られた透磁率を固定した状態で,どちらか一方を励磁させて解析する手法です。永久磁石の磁束密度とコイルの磁束密度を発生要因別に分解して評価を行うことが可能です。ここでは機能紹介もかねて,dq軸間の干渉があることが知られている電気学会ベンチマークモータ「D1モデル」を用いて説明します。

解説

図1に,定格条件である4.4Arms, β=20degで通常の負荷解析を行い,その後Frozen permeability法にて磁石のみ(通電電流ゼロ。無負荷解析と同等)として解析した磁束密度分布を示します。参考までに,無負荷解析であるFrozen permeability法を使用しない磁石のみの磁束密度分布も併せて示します。これより,Frozen permeability法では固定された透磁率が分布しているため,通常の無負荷解析と比較して異なる磁束密度分布が得られていることがわかります。すなわち,負荷状態では無負荷状態と異なる磁束の流れとなっていることが確認できます。

(a) 磁石+電機子電流

(b) 磁石のみ(Frozen permeability法)

(c) 無負荷解析

Fig.1 D1モデル Frozen permeability法による磁束分布の分解

次に,Frozen permeability法を使用した磁石のみの解析のd軸鎖交磁束を磁石鎖交磁束ψmとしてトルク式,

Tm=Pn(ψ0diqψ0qid)=Pn{ψmiq+(LdLq)idiq}   (1)

より計算したトルク(LdLq1)と,負荷解析で得られたdおよびq軸磁束を用いてLd, Lqを算出してトルク式(1)より計算したトルク(LdLq2)と,一般的なLd, Lqの算出方法です。以下の手順,

  1. 磁石磁束ψmの算出
    電流をiq = id = 0 (無負荷)とし,指定回転数で定速回転させて計算した結果より,dq変換したd軸磁束ψ0dが磁石磁束ψmとなる(ψm=ψ0d)。
       
  2. Ldの算出
    基本波電流を考え,電流をiq = 0, id = const. (β = 90 [deg])とし,指定回転数で定速回転させて計算した結果より,dq変換したd軸磁束ψ0dと(1)の磁石磁束を用いて,次式より求まる。
    ψ0d=Ldid+ψm   ・・・(2)
       
  3. Lqの決定
    基本波電流を考え,電流をid = 0, iq = const. (β = 0 [deg])とし,回転数Nで定速回転させて計算した結果より,dq変換したq軸磁束ψ0qを用いて,次式より求まる。
    ψ0q=Lqiq   ・・・(3)
       

で求めたモータパラメータを用いて算出トルク式(1)より算出したトルク(LdLq①),FEA結果(FEA)と実測結果(Measurement)と比較した平均トルクを図2に示します。これより,Frozen permeability法を用いて算出したものの方がFEA結果に近い結果が得られていることが確認できます。ただし,ψmのみを変更した場合(LdLq②-1)はまだ差が大きく,Ld, Lqも変更した場合(LdLq②-2)は,FEA結果と非常によく一致していますが,これはトルクの第一式のdq軸磁束を用いたものと等価となります。このように,トルクの成分分析も可能であることから,設計の改善指標として傾向を把握するのに有用な方法であると思われます。

Fig.2 D1モデル 平均トルク 算出方法の比較(4.4Arms, β = 20deg.)

以上簡単ですが,Frozen permeability法を使用した分析方法について紹介しました。Frozen permeability法を用いたトルク成分の詳細な分析は,以下の論文で詳しく説明されていますので,ご興味のある方は参照いただければと思います。

参考文献

首藤大輔・髙橋康人・藤原耕二:
Frozen Permeability法を用いた永久磁石同期モータの発生要因別トルク分離に関する一考察」,
電学静止器・回転機合同研資, SA-18-81, RM-18-100, pp. 67-72 (2018)

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