EMSolutionでは、"SDEFCOIL(表面定義電流ソース)"を利用することによって、矩形断面コイルに対して断面でほぼ一様な電流密度になる電流ソースを入力することができます。このソースは厳密に電流の発散をゼロにすることができます。ただし、周期対称条件を使用したときにはこの条件が満たされず、ICCG法が発散する場合があります。
例えば、Fig.1のようなモデルで、90度周期対称条件で計算しますと、ICCG法の収束が0.02程度までしか収束しません。メッシュは、もちろんx=0とy=0において、完全に90度回転すれば一致させるようにしています。ただし、コイル形状がx軸側とy軸側で対称になっていません。発散の原因は、x=0面とy=0面における、電流密度を決める2つのポテンシャルの分布の違いにより、電流の連続性が満たされなくなったことによります。メッシュを45度に対して対称に作っても、これらのポテンシャルの決定における数値誤差により収束は良くなりますが、それでも若干は起こります。例えば残差が$10^{-5}$程度まで小さくなる時にはこのままでも問題はないと言えますが、非線形計算等を考えますと、さらに収束させておきたいところです。
そこで、COIL(外部電流磁場ソース)の場合と同じような正則化をできるようにしました。解析方法は、コイル内でスカラポテンシャルを割付け、電流の連続条件を満足させるようにポテンシャルを求め補正するものです。
Fig.2、3に正則化補正前後のコイル電流分布を示します。補正後、若干コイル断面での一様性が無くなっていますが、電流の連続性は良くなっています。補正しますと、所定の$10^{-10}$まで収束しました。
Fig.4、5は補正有り無しで解析した静磁場解析の結果です。見た目にはほとんど変わらず、0.02程度までしか収束しない補正無しの結果で問題ないとも言えます。ただし、正則化しない場合、非線形計算時に、非線形計算の収束がこの程度までしか行えず問題となります。また、非常に小さい変動に対する応答を求める際にも問題となります。
本機能を使用する場合の注意点は、不連続な電流も平均化されてしまうことです。例えば、強制的にFig.6 (a)の様に不連続な電流(上部0.5$A/m^2$、下部$1A/m^2$)を与え正則化補正を行いますと、Fig.6 (b) の様に平均化された電流0.75$A/m^2$の電流が流れることになります。従って、大きな不連続性を持つ電流を入力しますと、所定のコイル電流が流れないような解析になってしまいます。正則化しますと、電流が不連続な場合でもICCG法は収束してしまいます。あくまで、正則化は補正ですので、できるだけ電流の連続性が満たされるようにコイルを定義する必要があります。確認の意味で、正則化無しで一度解析を行って、ICCG法がある程度まで収束することを確認しておいてください。もし全く収束しないようであれば、電流に大きな不連続性があると予想されます。また、出力として補正後のコイル電流分布が出せますので、その分布の確認も重要です。
断面を流れるトータルの電流量を固定したいところですが、今後の課題とさせていただきます。また、この正則化手法は他の電流指定にも適用できます。
"ELMCUR(内部電流ソース)"、"SDEFCOIL(表面定義電流ソース)"および
"COIL(外部電流磁場ソース)を用いた静磁場解析"での電流磁場ソース源入力で、ICCG法が充分収束せず発散するような場合にご利用ください。
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