電磁界解析ソフトウェアEMSolution

非線形オプション比較

概要

EMSolutionでは非線形収束に関わっていくつかのオプションを用意しています。これらのオプションの選択は経験に頼ることも多く、明確な指針を出すことは難しいですが、ここでは、Team Workshop 問題#20をオプションを変えて比較してみます。問題により、収束状況が変わり他の問題では全く違った傾向が現れることもありますので、ご注意ください。

解説

TableⅠ.に使用したオプションでのICCG法および非線形繰返数、繰返計算の計算時間、解析結果値を示します。

計算は4ステップを行ったトータルが示されています。解析結果はコイル電流5kAの時の、計算領域(1/4)におけるヨーク磁束量と可動子に加わる電磁力を示しています。収束パラメータはICCG収束条件1.e-6、非線形収束条件1.e-6、非線形緩和ファクタ1.0(緩和しない)としています。また発散判断に対しては、DIV_FACTOR=2.0、DIV_ITEARTIONS=10としています。Case 1はr8.9以前に行っていたオプションでベンチマークとして提供していたものです。計算は、Pentium III 1MHz、Windows XP Proで行っています。

TableⅠ.線形収束オプションと収束繰り返し数、計算時間、解析結果

TableⅠ.線形収束オプションと収束繰り返し数、計算時間、解析結果

OptionsCase 1Case 2Case 3Case 4Case 5Case 6Case 7Case 8
REGULARIZATION-
SCALING-----
RENUMBERING-
INIT OPTIONS-------
MAT POINTS--
LINE SEARCH------
Results
ICCG Iterations8316457506067504614611177
Nonlinear Iterations1916191519141419
Calc. time (sec)379.3291.2344.1269.6341.3256.9243.7456.9
Flux A (Wb)1.28069E-041.28080E-041.28069E-041.28428E-041.28070E-041.28069E-041.28414E-041.28069E-04
Flux B (Wb)1.43927E-041.43931E-041.43926E-041.44022E-041.43927E-041.43926E-041.44015E-041.43926E-04
Force (N)2.03745E+012.03762E+012.03740E+012.07846E+012.03748E+012.03741E+012.07812E+012.03740E+01

まず、REGULARIZATIONオプションはr9.2より使用可能としたもので、外部電流磁場ソース(COIL)を使用したときに適用されます。本オプションは方程式を正則化し、ソースに誤差があり方程式が不能な場合でもICCG法の収束を可能とします。COILを使用される場合は必ずオプションを立ててください。Case 2で本オプションを立てますと、Case 1でICCG法が1.e-5程度で発散していたものが、収束条件通り収束するようになります。今の場合、収束回数および計算時間も減っていますが、発散しなくなりますので繰り返し数は増えることもあります。その分精度が上がると考えています。今の場合、計算結果は殆ど変わりませんが、発散時の精度以上の精度が必要な場合には大きく効いてきます。

SCALINGオプションはEMSolution ver9.3より選択できるものとします。従来は必ずスケーリング(行列の規格化)をしてきました。不完全コレスキー分解を行っていますので、スケーリングはあまり関係ないようです。スケーリングしないCase 2は、スケーリングしているCase 3より、今の場合かなり収束繰り返し数は減っていますが、あまり一般的では無いようです。スケーリングを変えますと、残差式が変わり収束判定が変わるために若干の差異が起こります。スケーリング無しですと、スケーリングベクトルの領域が不要ですので、若干必要メモリが少なくなり、また余分な計算も無くなりますので、若干ですが、一回の繰り返しの計算時間も短縮されると思われます。従来との継続性のため、本オプションで従来通りスケーリングができるものとします。

INIT_OPTIONについては、"INIT_OPTIONの効果"で述べています。非線形繰り返しの初期値をゼロクリアしますので、Case 5のように非線形繰り返しが増えます。ただし、"INIT_OPTIONの効果"にありますように、このオプションを立てた方が良い場合があります。

MAT_POINTSオプションは直接非線形収束をコントロールしている訳ではないのですが、このオプションにより、非線形収束が変わるときがあります。このオプションを立てますと、非線形B-H特性をガウス点で評価し、要素行列等を作成します。このオプションの無いときは、要素中心点でのみ評価します。今の場合、Case 4でこのオプションを立てない方が非線形繰り返しが少なくなりましたが、あまり一般的ではありません。このオプションを立てない時、非線形収束が非常に遅いあるいは収束しない場合でも、このオプションを立てますと、収束しやすくなる場合が多く見られます。この原因は不明ですが、ガウス点全てで評価されますので平均化が行われる結果かと考えています。結果は、このオプションを立てているCase 4、7で若干ですが、他のものとの差が大きくなっています。どちらが精度があるかは、今後の問題です。

最後に、LINE_SEARCHですが、本オプションはEMSolution ver9.3よりリリースしています。このオプションでは、非線形緩和ファクタを自動的に計算してゆきます。ニュートンラプソン法で求まった方向ベクトル上で非線形残差がゼロとなる点を見つけ、緩和ファクタとします。Case 6でその効果がでていることがお解りいただけると思います。

本問題では、適切なオプションを立てると3割程度の計算時間の短縮が見られました。より収束の悪い問題ですと、より計算時間の短縮が見られると思います。ただ、始めに述べましたように、問題により異なりますので、残念ながら利用の方々に工夫していただくことをお願いせざるを得ません。これらのオプションの設定により、大きく計算時間が短縮するというようなことがありましたら、私どもにもお教え願いたく、ご協力のほどお願い申し上げます。

リナンバリング機能

EMSolution ver9.3より行列のリナンバリングを行わないことができるようにしました。本オプションの効果について追加します。EMSolutionではデフォルトとしてReverse Cuthill-McKee 法による行列のリナンバリングを行います。Case 8としてCase 3からリナンバリングを除いた場合を示します。やはり、リナンバリングの効果は大きく、ICCG法の収束がかなり悪くなります。リナンバリングは行う方が良いようです。スライド法を使用する場合は、リナンバリングのために大きな配列を用意し、リナンバリングを行わないとかなりの容量節減となるのですが、おすすめはできません。

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