誘導電動機の二次元解析を例として、EMSolutionの新しい機能について、説明します。
新しい機能として、
従来、スライド法による、固定部と可動部の接合は静磁場および過渡解析に限られてきましたが、交流定常解析においても使用が可能となりました。このことにより、同じメッシュで、交流定常、静磁場、過渡解析を統一的に取り扱うことができます。 また、固定部と可動部の周波数を実効的に変えることにより、滑り効果を入れることができます。
非線形定常状態を求めるには、過渡解析を定常に達するまで行う必要があります。ただ、系の時定数が大きいときには過渡状態が長く 続き多ステップの解析を行う必要が生じます。ゼロ初期値から始めますと多大のステップを要し過大な計算時間を必要とする場合があります。このとき、交流定常解析(現状線形解析に限られます)の結果を初期値として計算を始めますと、比較的早く定常状態に達します。
ここでは、「電気学会回転機のバーチャルエンジニアリングのための電磁気解析技術調査専門委員会」において検討されているモデルを例として、上記機能につ いて説明します。二次元解析の結果で回転子バーのスキューの効果は入っていませんが、スキューを入れた三次元解析も同様に可能です。 Fig.1に解析に用いたメッシュ分割図を示します。Fig.2はその一部を拡大したものです。空隙を4層に分割し、その中心面にスライド面を設けます。モデルは180度回転対称とし、全体の半分を解析します。三相の固定子巻線はY字結線されているとし、電圧駆動されるとします。ま た、ロータバーには、エンドリングを考慮した等価的な電気伝導率を与え、EMSolutionのSUFCURにより、z方向のトータルの電流量をゼロとしています。
Fig.3に回転子が運動しない場合(すべりS=1)の、固定子一次巻線の電流変化の解析結果を示します。負の時刻は交流定常解析の結果を示し、正の時刻はそれを初期値としての解析結果を示します。交流定常解析は透磁率を適当に与え、線形計算を行います。過渡解析の初期に細かい振動が見られますが、すぐに 定常に達し、過渡現象は見られなくなります。 この解析では、ゼロ初期値から出発すると、定常に達するまでには10周期程必要とされます。Fig.3では2周期目でほぼ定常解が得られます。Fig.4 に回転子に働く回転トルクを示します。この場合も2周期目でほぼ定常に達しています。
Fig.3, 4からは、交流解析でほぼ一次巻線電流、平均トルクが評価できることがわかります。
Fig.5、6には回転子回転数1125rpm、すべりS=0.25の場合の結果を示します。この場合、交流定常解析では、若干一次巻線電流が小さく平 均トルクが大きくなっていますが、それでも過渡解析2周期目で定常に達しています。交流定常解析の結果は、入力する磁性体線形透磁率によりますが、この例では、あまり過渡解析に影響しないようです。
Fig.7,8に鉄材中の磁束密度強度および磁束分布を示します。磁束は、指定したz方向幅(DELTA_Z=42mm)を通過する磁束量です。磁場は等磁束線の方向を向きます。磁束線が、スライド面を横切って正常に連続していることが見て取れます。Fig.9に同じ場合の、磁束密度矢印図の一部を示します。
Fig.10には、一次巻線およびローターバーの電流密度変化を示します。一周期のみを表示していますので解りにくいかもしれませんが、一次巻線の電流分布の回転に対し、ロータがすべりS=0.25だけ遅く回転していること、ロータバーの電流は一次電流とほぼ逆フェーズで同じ速度で回転していることがわかります。
本解析法の開発には、参考文献[1]を参考にさせていただきました。
また、千葉工業大学の山崎克巳助教授には、
ご親切なご教授を頂き、ここに感謝の意を表します。
[1] 山崎、新福(千葉工業大学) 「中性点電位変動を考慮した誘導電動機の特性解析」、電気学会研究会資料、静止器・回転機合同研究会、SA-99-23,RM-9
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