小型のスイッチング電源回路のパワーインダクタとして使用されるフェライトや電力用フェライトは,高周波領域で使用されることが多く,周波数が高くなると損失が増大することが知られており,その低損失化が課題となっています。一般的に高周波領域での軟磁性材料の磁気特性は,複素透磁率の周波数特性を用いて表されます。
この度,交流定常解析(AC解析)において複素透磁率を設定できるように拡張しましたので,紹介いたします。
複素透磁率を用いた渦電流を含まない線形交流解析,いわゆるjω法の基礎方程式は次式で表されます。
ここで,
ここで,
高周波領域での実際のコアロスは,一般的にヒステリシス損,渦電流損,残留損からなると言われています。
文献[1]を参考に,Fig.1に示す,リング試料に一次,二次コイルを巻きつけたトロイダルコイルを用いて解析します。
材質はSUS430のバルク試料とし,試料中の平均磁束密度が5mTとなるように電圧を決定し,100Hz,1kHz,10kHzの交流電圧を印加します。
計算領域は角度方向0.5度,上下方向1/2としています。複素比透磁率は文献[1]を参考に設定しました。
100Hz,1kHzまでは
Fig.2に電流波形を示します。電流その位相差を比較するために,実数部のみの100Hzの電圧波形も併せて示します。
電圧波形は周波数が10倍になると振幅が10倍になるだけで,位相は同じことにご注意ください。
これより,複素透磁率を使用すると100Hzではわずかに電流位相がずれていたのが,1kHzでさらにずれています。
これは1kHzまでの複素透磁率の
ここで,
Table 1 磁気損失比較
周波数 | BHループ面積 | (2)式 | EMSolution |
---|---|---|---|
100Hz | 1.908 | 1.892 | 1.918 |
1kHz | 104.04 | 103.68 | 104.57 |
10kHz | 7221.3 | 7171.2 | 7258.1 |
簡単ですが,複素透磁率を用いた交流定常解析について紹介しました。本機能はACで使用可能です。 文献[1]のように,複素透磁率と渦電流の両方を考慮した解析も可能です。ぜひご活用いただければと思います
[1] : 梁,平田,太田,光武,河瀬
「非接触磁気方式ポジションセンサのインピーダンス特性解析」,SA-07-72/RM-07-88 (2007)
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