ICCG法は、不完全コレスキー分解付共約勾配法の略ですが、EMSolutionではこの方法を全面的に採用しています。この方法は、有限要素法に特有の疎行列線形連立方程式を低容量で高速に解くことができます。また、下に述べますように、辺要素法に非常にマッチした方法であると考えています。
まず、ICCG法は辺要素法で特有な不定の方程式が解けます。開発当初、不定方程式が解けるはずが無いと考え、木構造によるゲージを課し不定性を無くしていました。ただ、解けることは解けるのですが、極端に収束の遅いものでした。ゲージ条件をはずしますと、不完全コレスキー分解でゼロ割が起こりました。やむをえず、いろいろ調べましたが、Treeゲージの取り方により、少しは収束は良くなるのですが、それでも収束は非常に遅いものでした(図8)。ところが、岡山大学ではゲージ条件無しで高速に解いておられました。岡山大藤原氏(当時,現同志社大)に相談したところ、行列の対角成分に1より少し大きい数(確か1.02でした。加速ファクタと呼ばれています)を掛けられていることに気がつきました。これを試してみると、なんとすかすか解けてしまいます(図9)。その後、藤原氏は、加速ファクタについて詳細に調べられ、その最適値を求める方法を考えられています[27]。
ICCG法は不定の方程式が解けるのですが、右辺のソース項に電流連続を満たさない電流を入れてしまった場合方程式は解を持たない不能の方程式になります。意識的に不能な方程式にしなくとも、数値解析においては切り捨て誤差等があり、多かれ少なかれ不定の方程式は不能なものになってしまいます。もし、これを直接法で解くと全くおかしい答えが出てきます。ところが、ICCG法で解きますと、このような方程式でもある程度収束し、その後発散します。それで、その最も収束したところの解を取りますと、かなり精度のあるものが出てきます[8]。また、その収束はどうやら方程式に含まれる誤差程度まで行くように思われます(図10)。逆に言いますと、収束誤差は方程式の不整合性の指標となります。時たま間違った設定を行い計算しますと、ICCG法が全く収束しないことがあり、見直すと間違っていたことが解ることがあります。こういう意味で、ICCG法は方程式の不能性やその程度を示してくれる良い方法といえます。
2ポテンシャル法では、ソース項をビオ・サバール則の積分を行い求めます。ソースと積分領域(トータルポテンシャル領域と変形ポテンシャル領域の境界)が近いときどうしても誤差が大きく出てしまいます。これの不能性を除く方法も考えられますが、EMSolutionでは何ら補正をしていません。このため、2ポテンシャル法で計算したときは、ICCG法の収束がある程度まで行くのですが、その後発散します。しかし、上に述べたように、最も収束したところの解をとれば妥当な解が得られ、実用的には問題は小さいものです。その後,2ポテンシャル法に限らず,右辺の電流ソースに誤差を取り除く手法を開発したことで,電流磁場ソースの誤差をほぼ無くし,メッシュ誤差程度までICCG法を収束させることができるようになっています。
その後、ICCG法については、静磁場、過渡解析の実数計算だけでなく、定常解析の複素数計算にも使えることが示されました。また、木構造のゲージのみならず、
しかし、ICCG法でも非常に収束が遅く解きにくくなる場合があります。例えば、非常に間隔の狭い磁性体間のギャップがある場合に、非常に薄い要素を使用した時です。このよう場合非常に困ります。これに対しては、EMSolutionでは、特殊なギャップ要素を使用します。このことにより、収束は早くなり、また、通常の三次元要素を使った場合と同じ解が得られることを確認しています。
同様のケースとして,基盤の配線のような非常に扁平な要素(厚さ
ICCG法の収束しない他の例としては、
©2020 Science Solutions International Laboratory, Inc.
All Rights reserved.