辺要素有限要素法は、1980年代から広まった比較的新しい解析技術ですが、その利点が認識され広く用いられるようになり、EMSolutionにおいても採用しています。
辺要素の導入により、それまで困難であったことや不明確であったことが解決されました。高周波解析でのスプリアス解が出なくなったことはよく知られていますが[20]、低周波領域でも多くのことが解決されました。
まず、ゲージ問題の解決があります。節点要素法ではゲージ固定のためにペナルティ法等によりクーロンゲージを課すことが行われましたが、その必要性やペナルティの重みが不明確なものでした。境界条件を適当に入れれば解けてしまう場合も有りました[21,22]。節点法における問題点は、その使用される有限要素関数空間の中の非回転場(回転(rotation)がゼロの関数空間)が不明確で(図2)、これを除くためにはいろいろな工夫が必要だった様に思われます。
辺要素の導入により、ゲージ問題は一気に解決されました[13]。まず、節点要素では離散化された関数空間の中でゲージ変換は困難でしたが、辺要素関数空間の中では連続場と同様に変換が可能になりま した。ゲージ不定性は、ゲージ変換可能性があって意味を持ちます。
上に述べたように離散化関数空間の中でもゲージ変換が可能で有ることは、何らかのゲージ変換を課さなければ、不定性が方程式の中に残ることを意味します。ICCG法により不定方程式を解くことについては後で述べますが、ここではゲージ固定について述べます。
ゲージ固定の方法として、一つは木構造(Tree, Co-tree)による固定方法があります[13,23]。これは、有限要素メッシュ内の辺を回路網解析の手法で分解することによります。Treeとは、閉ループを構成しない最大数の辺の集合であり、Co-treeはそれを加えると閉ループができてしまう辺の集合と言えます。その分解の仕方は一意的では有りませんが、それぞれの数は決まっています。このように分解し、通常Tree辺の自由度はゼロとし、変数から除きます。この方法は、明確に不定性を除くことができ、理論的には美しいのですが、共約勾配法の収束が(極度に)遅くなることが知られています[24]。
ゲージ固定のもう一つのとして、辺要素でもクーロンゲージを、ラグランジの未定常数法の形で課す方法が有ります[25]。そこでは、クーロンゲージ(
導体部に対しては、
EMSolutionでは、
辺要素により、容易でわかりやすくなったものの一つとして、境界条件が有ります。電磁場解析での代表的な境界条件として、電気壁条件(
辺要素形状関数では、要素境界でベクトルの法線成分が連続にはなりません。例えばベクトルポテンシャル
EMSolutionでは、辺要素種としては、4面体(4辺Nedelec一次)、三角柱(9辺)、6面体(12辺)の一次要素、セレンディピティ族20節点6面体[17]に対応する二次6面体要素(36辺)(図4)を用意しています。最近、表皮効果の大きい渦電流解析で一次4面体要素を使用すると、渦電流密度分布が滑らかにならないことが解り、一次辺要素に二次節点要素関数を加えたものを考案し、扁平な4面体要素でも妥当な解が 出ることを示しました[2](図5,6,7)。
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