電磁界解析ソフトウェアEMSolution

EMSolutionの基礎4-1
A-ϕ

 EMSolutionでは磁気ベクトルポテンシャルAおよび電気スカラポテンシャルϕを用いるA-ϕを基礎とする辺要素を用いる有限要素法を採用しています[17]

 A-ϕT-Ωと並ぶ通常磁場解析に使用される基礎的な定式ですが、その特徴はT-Ωに比較して
 

  • 渦電流多連結導体問題の取扱が容易である
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  • 非線形問題での収束性が良い(らしい)
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  • 変位電流を含めた高周波問題への拡張が容易(らしい)
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が挙げられます。

  一方、T-Ω法では非導電性領域がスカラ関数Ωで取り扱えるのに対し、A-ϕ法ではベクトル関数Aを用いる必要があり
 

  • 解析の自由度が大きくなる不利な点
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が有ります。
 
 A-ϕ法とT-Ω法は双対関係に有り、例えば静磁場解析において磁気エネルギーの積算値は両手法によって求められる値に挟まれることが知られています。誤差評価の観点からは、将来的には両手法による解析を行うことも考えられます。
 
 EMSolutionでは、基本的にA-ϕ法を採用していますが、未知数を減らすため空気領域に対しては磁気スカラポテンシャルΩを使用できるものとしています。ただ、システム行列の正値性が無くなるためか、ICCG法の収束がかなり悪いものになり、計算時間の短縮にはあまり役には立っていません[18]。計算機の容量が不足する様な場合に限り使用することにしています。
 
 また、EMSolutionの特徴として、空気領域に対し変形磁気ポテンシャルArを使用することができます(2ポテンシャル法)。Arは解析領域内の渦電流や磁化による磁場の寄与分を表しており、ソース磁場を分離したものです。ソース磁場は、ビオ・サバール則より求められます。
Arを使用する利点は、
 

  • ソース電流を解析メッシュと独立に表すことができる
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  • ソース電流による磁場は含んでいませんのでソース電流近傍のメッシュをそう細かくする必要は無い
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  • ソース電流は解析領域外に有っても構わない
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  • ソース電流は自由に解析領域内を動かせることができ、運動導体がある場合の解析が容易となる[10]
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 2ポテンシャル法はソース磁場の計算に多大の計算時間が かかると多く言われています。この方法では、トータルポテンシャル領域(Aが変数となる領域)と変形ポテンシャル領域(Arが変数となる領域)の境界面で、辺上のソース磁気ベクトルポテンシャルおよび面上の磁場強度(H)を積分する必要があります。これらは、ソース源が変位する場合を除き、一度計算しておけば良いものであり、EMSolutionではそう大きな負荷にはなっていません。ビオ・サバール則の積分には種々解析積分があり、それらを利用する必要はあります[19]