EMSolutionでは磁気ベクトルポテンシャル$A$および電気スカラポテンシャル$\phi$を用いる$A$-$\phi$法を基礎とする辺要素を用いる有限要素法を採用しています[17]。
$A$-$\phi$法は$T$-$\Omega$法と並ぶ通常磁場解析に使用される基礎的な定式ですが、その特徴は$T$-$\Omega$法に比較して
が挙げられます。
一方、$T$-$\Omega$法では非導電性領域がスカラ関数$Ω$で取り扱えるのに対し、$A$-$\phi$法ではベクトル関数$A$を用いる必要があり
が有ります。
$A$-$\phi$法と$T$-$\Omega$法は双対関係に有り、例えば静磁場解析において磁気エネルギーの積算値は両手法によって求められる値に挟まれることが知られています。誤差評価の観点からは、将来的には両手法による解析を行うことも考えられます。
EMSolutionでは、基本的に$A$-$\phi$法を採用していますが、未知数を減らすため空気領域に対しては磁気スカラポテンシャル$Ω$を使用できるものとしています。ただ、システム行列の正値性が無くなるためか、ICCG法の収束がかなり悪いものになり、計算時間の短縮にはあまり役には立っていません[18]。計算機の容量が不足する様な場合に限り使用することにしています。
また、EMSolutionの特徴として、空気領域に対し変形磁気ポテンシャル$A_r$を使用することができます(2ポテンシャル法)。$A_r$は解析領域内の渦電流や磁化による磁場の寄与分を表しており、ソース磁場を分離したものです。ソース磁場は、ビオ・サバール則より求められます。
$A_r$を使用する利点は、
2ポテンシャル法はソース磁場の計算に多大の計算時間が かかると多く言われています。この方法では、トータルポテンシャル領域($A$が変数となる領域)と変形ポテンシャル領域($A_r$が変数となる領域)の境界面で、辺上のソース磁気ベクトルポテンシャルおよび面上の磁場強度($H$)を積分する必要があります。これらは、ソース源が変位する場合を除き、一度計算しておけば良いものであり、EMSolutionではそう大きな負荷にはなっていません。ビオ・サバール則の積分には種々解析積分があり、それらを利用する必要はあります[19]。
©2020 Science Solutions International Laboratory, Inc.
All Rights reserved.